メンタル

FXで負けてしまう心理学【プロスペクト理論】

今回はプロスペクト理論について解説します。

プロスペクト理論とは、FXを含め、物事を決定する時、人はどの様に意思決定を行うのかというのを説くための理論です。

選んだ結果得ることのできる利益や損失(損害)の確率が分かっている状況において、人間がどの様な選択を行うのか?を説明できます。

プロスペクト理論を知っておくと、自分が取引を行っていく上でギャンブル的なトレードをするのではなく、堅実なトレードを行っていく事が出来るようになるといっても過言ではない心理学でもあります。

プロスペクト理論とは

FXにおけるプロスペクト理論とは何なのか、簡単な例を出しながら説明していきたいと思います。

その前に一つ注意点として、相場がものすごく動くと噂されている重要な経済指標があった際に、あなたが2つの有効な手法を持っていたと仮定して話を進めて行きます。

今までの負債が0の状況の場合。

  1. 今回の経済指標においては、確実に総資産の50%分の利益を上げる事ができる手法。
  2. 今回の経済指標においては、50%の確率で総資産の100%分の利益を上げる事ができる手法。(リスクは0とする)

まずはここで一つ質問なのですが、あなただったらどちらの手法でトレードを行いますか?

①の手法であれば、総資産の50%の利益を絶対に上げる事ができます。

②の手法では、50%の確率で、総資産の100%の利益を上げる事ができるが、50%の確率で利益が0という事も考えられます。

この様な状況の場合、①の、絶対に50%の利益を上げる事ができる手法を選んだ方が大半ではないでしょうか?

しかし、上記のどちらの手法を使ったとしても手に入る利益の期待値は総資産の50%と同額です。

この場合の心理としては、半分の確率で100%の利益が上がるよりは、確実に50%の利益を得た方のが、確実性があって賢いトレードだと考える人が多いかと思います.

では、次に下記の様な状況の場合はどうでしょうか?

負債が100万ある場合

  1. 今回の経済指標では確実に利益を上げることのできる手法なので、総資産の50%である50万の利益を上げる事ができ、過去の総負債額が50万円になる。
  2. 50%の確率で総資産の100%=100万円の利益を上げる事ができる手法。

上記2つの手法の違いとしては、①の手法であると、50万の利益を上げる事ができる為、100万の負債を確実に50万にする事が可能となります。

一方で②の手法の場合であれば、もし利益を上げる事ができた場合、過去の総負債額は0となり、完全に振り出しに戻る事ができます。

逆に利益を上げる事が出来なかったとしても、リスクは0なので何の問題もないという事になります。

ここでもう一度質問をさせて頂きますが、あなたであれば、①と②どちらの手法を選択しますか?

負債が0の状況では、確実に利益を上げる事ができる①の手法を選択した方が多かったかと思いますが、今回の様な、負債が100万ある状況ではどうでしょう?

①と②両方とも期待値は総資産の50%なのにも関わらず、負債が100万ある状況では、②の手法を選んだ方が多いのではないでしょうか?

この様な場合における、人間心理を把握しておくとしておかないでは、今後の取引に大きく影響を及ぼす可能性が有ります。

次は負債がある場合、なぜ人間はギャンブル的な選択をしてしまうのかという事を説明して行きたいと思います。

人間の脳はリスクを嫌う

それでは、なぜ人間は負債がある場合に、ギャンブル的な選択をしてしまいがちなのかという事について説明して行きたいと思います。

先ほどさせて頂いた、異なる2つの状況においての質問の答えに関して、質問①②共に、①と答えた方については、しっかりとしたメンタルコントロールができている人かと思います。

早速上記の事について説明して行きたいと思いますが、なぜギャンブル的な選択をしてしまいがちなのかと言いますと、人は目の前に利益がある場合には、利益を上げる事ができないというリスク回避を優先し、損失が目の前にあった場合には、損失自体を回避しようとする傾向があるということです。

負債が0の場合と、負債が100万の場合に照らし合わせて考えてみます。

負債が0の場合は、“50%の確率で利益が上がらない”というリスクを回避し、“100%確実に利益をあげよう”としていると考えられるという事です。

また、負債が100万の場合では、“100%の確率で確実に負債を残す”という損失を回避し、“50%の確率で負債を無くす”ようにしようと考えられるという事です。

要するに、人は損失を負っていない時には冷静に判断する事ができますが、損失を負うにつれてギャンブル的なトレードの仕方に変わってくるということです。

実際の取引でも起こり得る

ここまでは、分かりやすく説明をする為に、ただの例で説明させて頂きましたが、次に紹介するのは、実際の取引でも起こり得る可能性の高い例を紹介させて頂きます。

まずは大前提として、自分の手法や取引ルールを持っていて、尚且つバックテストもしっかりと行ったものと考えた上で説明させて頂きますので、ご了承ください。

例えば、バックテストの結果が、勝率60%、リスクリワードが3だったとします。(あくまでもただの例です)。

この様な場合、勝率は60%ですが、トレードの平均損失額に対して、平均利益の額が上回っているという事なる為、このままの方法(ルール)で取引を続けていくと、トータルでプラスの利益が出せる確率が高い事がわかるかと思います。

通常の考え方であれば、ルールに従いトレードを行っていくかと思いますが、始めは利益が出てきており、その後もルールをしっかりと守って取引を行っていたにも関わらず、負けの回数が多くなり、一時的に損失が膨らんでしまった場合はどうでしょう?

一時的な損失が出ているだけで、このままルールに従っていけば、トータルでプラスになる可能性は十分に考えられると思い、そのままルールを守ってトレードをしていく事ができますか?

この様な場合に、そのままルールに従ってトレードを続けていく事ができる人であれば、FXで多くの利益を出す事ができるかもしれませんが、この様な場合に、多くの人が、自分の行ったバックテストの結果に不信感を抱き始めるのではないでしょうか?

不信感を抱き始めた結果、自分のルールを破り、取引回数を増やしたり、取引枚数を増やしたりするなど、徐々に冷静さを失っていく人が多いかと思います。

この場合の状況としては、始めは利益が出ていたので、バックテストの結果を信用し、しっかりとルールを守って取引ができていた=ルールを破り、大きなリスクを取って勝負に出るというよりは、ルールをしっかりと守り、堅実なトレードを行っていく事で利益を上げるという、無理なリスクを回避するという心理が働いていると考える事ができます。

しかし、その後の、ルールをしっかりと守って取引を行っていたにも関わらず、負けの回数が多くなり、一時的に損失が膨らんでしまった場合=損失が膨らんでいった事が理由で、バックテストの結果に不信感を抱き、ここまでの一時的な損失を直ぐにでも無くしたいという心理が働いてしまいます。

上記2つのパターンというのは、記事の始めに紹介させて頂いた例の、負債無しと有りの質問と同じ事です。

上手くいっている時は冷静にトレードを行う事ができるが、上手くいかない事が続けば続くほど冷静にトレードする事が難しくなってくるという事です。

この具体例とほとんど同じとは言わないまでも、これと似た様な経験をした事がある人というのは多いのではないでしょうか?

通常通り冷静に考える事が出来ていれば、負け回数が増えていたところで、どの様な手法にも最大ドローダウンはあるわけで、現状それにあたっているだけだと考える事も出来ますし、仮に負け回数がものすごく多くなってしまった場合であっても、バックテストの結果を信じてトレードを続けていく事で、トータルでプラスの利益を出せる可能性も大いにあるわけです。

人間の心理的に、損失を回避しようとしてしまうのは当然の事だと思いますが、FXにおいては、損失が出たのは自分の責任だと認めた上で、なぜそのようになってしまったのかを考えていく事が重要です。

したがって、もしもこの理論のような事が自分の身に起きてしまった場合、一度取引を中断し、時間をかけてゆっくりと冷静に見直していく事も重要なことだと思います。